夫妻で研究、論文も一緒 ノーベル生理学・医学賞の坂口さん
今年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった大阪大学特任教授の坂口志文さん(74)は、妻の教子さん(71)も研究者です。同じ大阪大学で教員を務めており、2人はお互いのことを「同志」と語ります。「あまり話し合わなくても理解している」とあうんの呼吸で研究活動を支え合い、世界を驚かせる発見につなげました。【中村園子】

受賞決定から一夜明け、大阪大学を訪れた坂口志文さん(左)と妻教子さん=大阪府吹田市で7日
2人が出会ったのは坂口さんが20代のころ、研究生として在籍していた愛知県がんセンターでした。熱心に研究に励んでいた坂口さんのことを「変わった種類の人がいたので気になった」と教子さんが思ったのがきっかけだったといいます。
穏やかな坂口さんに対し、明るく前向きな性格だという教子さん。「(妻は)私が研究している内容を全部知っています」と坂口さん。「人気のない研究テーマで、いつまでアメリカで研究を続けられるか。重要な判断を下す時にも楽天的に構えられ、妻の存在がすごく大きかったです」と振り返ります。
皮膚科医だった教子さんは研究の魅力について「最初は分からないことでも、『これをやったらどうなるんだろう』と真剣になれる。創造的でワクワクします」と語ります。
役割を分担して
ともに研究に励む中で、細かい実験は器用な教子さん、マウスなどの動物を触る実験は坂口さんと役割も分担。免疫の過剰な働きを抑制する「制御性T細胞」と名付けられるリンパ球の働きを見つけた1995年の論文では、共著者として2人の名前が刻まれ、30年後のノーベル賞を引き寄せました。
受賞が決まった翌日の7日には、2人そろって記者会見しました。坂口さんは「サイエンスの分野は非常に広い。今回の受賞決定は非常に幸運だと思っています」と笑顔で語りました。二人三脚で困難を乗り越えてきた教子さんも「このような形になって本当によかった」と祝福しました。
近年、制御性T細胞は1型糖尿病やがんの治療への応用研究が進んでいます。2人も自ら創設したベンチャー企業で、治療法の実用化を目指しています。教子さんも「(最初は)大したことがないと思われているような新しい治療法も、10年後には普通になる。今はそういう時期だと思って頑張っています」と意気込みます。
がんが治せる病気になる未来へ――。世界的名誉をつかみ取った後も、2人の歩みは続いていきます。
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