カメムシの「耳」、卵守る役割 菌育て天敵のハチ防ぐ

ノコギリカメムシ=産業技術総合研究所提供

 

カメムシの一種いっしゅの脚あしに、「耳みみ」だと思おもわれていた器官きかんがあります。これが、特定とくていの細菌さいきんを育そだてる器官きかんであることが分わかったと、産業技術総合研究所さんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうしょ(産総研さんそうけん、茨城県いばらきけんつくば市し)などの研究けんきゅうチームが発表はっぴょうしました。菌きんを卵たまごに植うえ付つけることで、卵たまごを寄生きせいバチから守まもる「共生きょうせい」の役割やくわりを果はたしていました。

この種しゅは、日本にほん全土ぜんどに分布ぶんぷし、黒くろに近ちかい褐色かっしょくのノコギリカメムシです。メスだけが、後うしろ脚あしに平ひらたい器官きかんをもっています。昆虫こんちゅうの多おおくは、脚あしや腹はらに耳みみの働はたらきをする平ひらたい鼓膜こまく器官きかんがついており、ノコギリカメムシのこれも耳みみだと考かんがえられてきました。

脚あしこすりつける行動こうどう

産んだ卵に後ろ脚をこすりつけています=産業技術総合研究所提供

しかし、産卵さんらん直後ちょくごのメスが後うしろ脚あしを卵たまごにこすりつける行動こうどうをすることから、研究けんきゅうチームが疑問ぎもんに思おもい調しらべました。すると、この器官きかんからは分泌ぶんぴつ液えきが出でており、3種類しゅるいの菌きんを培養ばいよう(育そだてること)していたことが判明はんめいしました。この菌きんが卵たまごにくっつき、卵たまごを覆おおうように菌糸きんしが成長せいちょうしていました。

ノコギリカメムシの天敵てんてきは、卵たまごに自分じぶんの卵たまごを産うみ付つけて幼虫ようちゅうに食たべさせる寄生きせいバチです。しかしこの菌きんは、ノコギリカメムシの卵たまごにはダメージを与あたえない一方いっぽう、菌糸きんしが寄生きせいバチを寄よせ付つけない働はたらきをして、卵たまごを守まもっていました。

 

ノコギリカメムシの後ろ脚。左がオス、中央と右がメス。メスのみに平たい器官があり、そこから菌糸が生えます(右)。下の画像は顕微鏡で見たもので、黒い棒の長さは0.5㍉㍍です=産業技術総合研究所提供

長なが年ねん詳くわしく調しらべられず

チームによると、昆虫こんちゅうの器官きかんが別べつの役割やくわりをもっていると判明はんめいするのは珍めずらしいそうです。1970年ねん代だいの日本にっぽんの研究けんきゅうで、ノコギリカメムシが脚あしを卵たまごにこすりつける行動こうどうが分わかっていたものの、その後ごは詳くわしく調しらべられていませんでした。研究けんきゅうチームの深津ふかつ武馬たけま・産総研さんそうけん首席しゅせき研究員けんきゅういんは「想定外そうていがいの発見はっけんで、微生物びせいぶつである菌きんとの共生きょうせいの起源きげんや進化しんかを考かんがえる上うえで興味深きょうみぶかい成果せいかです」としています。

研究けんきゅう成果せいかの論文ろんぶんは、アメリカの有名ゆうめいな科学かがく誌し・サイエンスに掲載けいさいされました。【酒造しゅぞう唯ゆい】

 

毎日小学生新聞より転載