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絵本「たすひくねこ」が磨く、数の感覚 小1「くり上がり」理解の助けに

小学1年生になると、算数の授業で「くり上がりのあるたし算」「くり下がりのあるひき算」を学びます。とまどう子どもが目立つ単元ですが、授業では「さくらんぼ算」という、親世代にはなじみの薄い計算方法を使うことが多いようです。絵本「たすひくねこ」(マイクロマガジン社)では、「くり上がり」の際に大切な「10のまとまり」を、愛らしい猫の絵と、分かりやすいお話を通じて理解できることから、教育現場での活用も広がっています。作者のにわ先生、監修の大迫ちあき先生、編集者の有吉哲治さんに、お話を伺いました。子どもたちが「数の感覚」を磨くために必要な視点とは?

◆どのようなきっかけで、この絵本が生まれたのでしょうか?

にわ先生 小学校入学前の我が子自身が、「数の概念を理解していないのかな」と思う場面がありました。一般的な教科書よりも、なだらかなステップで数を伝えられる本があればいいなと思いました。

大迫先生 「1」「2」「3」など数字だけが書いてある絵本はよくありますが、身の回りの好きなものに、数を「入れる」感覚の絵本があったらいいなと思っていました。そういう絵本を作りたいと思い、監修を引き受けました。

◆今の公立小学校では、小学1年生で「くり上がりのあるたし算」「くり下がりのあるひき算」を学ぶときに「さくらんぼ算」という計算方法を使うことが多いようです。「さくらんぼ算」は、ひき算なのに、計算過程でたし算が必要で、混乱を招きやすいのかもしれません。

大迫先生 「『足し算』と『引き算』ができるようになる」という目的に向けて、それぞれの子どもにあった学び方を探す必要があります。算数を学ぶ方法はいろいろあって、「『さくらんぼ算』ができるようになること」は、目的ではありません。「たすひくねこ」を通じた数への理解も、一つの方法です。絵本だと、抽象的な数を視覚化でき、「数量感」が身につくからです。

また、子どもによっては、数が大きくなると、つまずくことがあります。そういう時は、「20個」と言われても、「2」と「0」とそれぞれ数字を分けて捉えてしまっているんです。でも「たすひくねこ」だと、身近な猫がたくさん描いてある絵を見て「ねこ20匹って多い!」という感覚を得られるんです。

◆「たすひくねこ」は、「抽象的な数」を理解する助けになりますね。

大迫先生 1冊目の「たすひくねこ」は、「10」までの数字だけで作っています。そこはこだわりです。「10」は奥が深いんです。最初は猫が1匹ずつ増える「+1」のたし算から描かれています。そして、「10」になったら、「数」を身につける上で大切な「○と△であわせて10」という数の組み合わせ(10の補数)に注目します。

さらに話が進んでいくと、「10」から猫が1匹ずつ減っていきます。ぱっと「10の補数」を思い浮かべられるような「数感覚」は、このように適切な順番と方法、分量で学べば、伸びていくと考えています。

昨年末に発売した2冊目「たすひくねことひよこ団」は、くり上がり、くり下がりのあるたし算・ひき算も、目で見て学ぶことができます。

◆絵本を通じて算数を学ぶと、どんな力が身につきますか?

大迫先生 小学校低学年ごろまでは特に、国語と算数の力は密接に関係しています。計算はできても、文章題になると解けない子もいるのです。国語の力とは、言い換えると、「読解力」ともいえるでしょう。「たすひくねこ」には、数字や量、形、長さなどに結びつく「さんすう言葉」もちりばめられています。「左(右)」「上(下)」や「大きい(小さい)」といった言葉です。

「たすひくねこ」を読むと、言葉の力も身につきます。また、にわ先生が描く愛らしい猫の絵を通じて、スモールステップで数を学べます。そのため、(障がいのある子どもが学ぶ)特別支援学校などの授業でも活用されています。

有吉さん 特に、未就学児から小学校低学年の子どもたちに広く読んでもらえているようです。勉強の入口として、「ワクワクすること」が大切だと思い、この本を作りました。ぜひ手に取って欲しいです。私とにわ先生の猫も絵本にいるんですよ! 見つけてみて下さいね。公式サイトでは、「おめん」や「めいろ」、「さんすうプリント」がダウンロードできます!