「夢」は変わってもいい 
ヨシタケシンスケさん

絵本作家・ヨシタケシンスケさんが2024年に発表した絵本「おしごとそうだんセンター」(集英社)には、大きな機械で雪を集めて作る「カマクラ屋」など、実際には存在しない、めずらしいお仕事がたくさん登場します。大工さんになることが夢だったというヨシタケさんは、どんな小学生だったのでしょうか。

ヨシタケシンスケさん

ヨシタケシンスケさん


「らしさ」を見つける

◆どんな小学生でしたか?

ヨシタケさん こわがりだったので、先頭に立って物事をはじめるような子ではありませんでした。人の言うことをだまって聞き、自分の意見を言わない方が安心して過ごせる感じ。姉と妹にはさまれた4人きょうだいの中で育ちました。

自分のペースで何かを作るのは好きで、小学校では、ねん土を使って焼き物を作るクラブに参加していました。お地蔵さんの顔を、点でかわいく描いたら、先生に「もっとまじめに」などと言われて「えー」って思ったことは覚えています。

◆絵を描くときに大切なことは?

ヨシタケさん 「見ないで描く」のはオススメです。今、画像検索をすると正解がすぐ見られますが「わからないもの」を手探りで考える時間が楽しい。頭の中にあるものだけを組み合わせて、どうにか正解を作り上げようとする作業が大事な気がします。

一度描いてから正解を見ると、いかにぼんやり物を見ていたか、気づきます。例えば、西洋風のお城を描いてみたら、日本のお城みたいになっちゃったとします。そうすると「違いをよく見よう」となりますよね。

そういうことをくり返していくうちに、「~らしさ」(特徴)が何からできているのか、分かるようになります。

◆なぜ絵本作家に?

ヨシタケさん ぼくは、手帳に気づいたことを描きためています。かっこいいな、すてきだな、と気になったことをコレクションするのです。すると「自分が何に喜びを感じているのか」が、分かってくる。自分を楽しませるために絵を描いていたので、他の人に「おもしろい」と喜んでもらえることを知ったとき、びっくりしたし、もっと楽しくなりました。

(会社員などをへて)絵本作家になったのは40歳になってから。かつてのぼくのような子も、「心が楽になる考え方」を増やせるように、絵本を描いています。

◆小学生にメッセージを。

ヨシタケさん 自分を傷つける人からは逃げてください。相手に変化を求めるより、逃げた方がいいです。

今って、将来の夢や意見を、パッと答えられないとダメに思われる世の中だけど、夢はコロコロ変わるし、考え込まずにそれらしいことを言うのも悪くない。「夢がない」「意見がない」のも意見です。自分の意見がないことがコンプレックスだった、当時のぼくみたいな「心配性チーム」の子に、そう伝えたいです。

 

ヨシタケシンスケさん
1973年、神奈川県生まれ。「MOE絵本屋さん大賞」第1位などを受賞したデビュー作「りんごかもしれない」は、国内外で100万部を超える大ヒット。昨年6月に「ちょっぴりながもちするそうです」、昨年9月に「しばらくあかちゃんになりますので」を発売。2児の父。